短編にもならない思いつき小ネタ集
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すれ違う人の中に、昔の知り合いの気配を微かに感じて、ゆっくり振り返った。
道のど真ん中で振り返った先を見つめながら、足が動かない。
そんな私を怪訝な目で見ては歩いていく人々。
「晋助……。」
蚊のような小さな呟きが喉からもれた。
呟いた間にも彼は遠ざかっていく。
動け足、と強く思った、
「晋助――――!!!」
走り出す脚と怒鳴る声。
届かないのかあえて無視をしているのかわからない、晋助のほうへ全速力で走り行く。
思った以上に距離が開いていて、届かない、と思考を一瞬掠めた言葉に胸が締め付けられた。
気づいて、晋助。
あともう少しと言うところで晋助が裏路地に入る。
その後を追って、自分も路地に入ろうとして、左足に急ブレーキをかけて右足で路地に入ろうと踏み切った瞬間、
引っ張られて凄い音をたてて壁に背中を打ち付けられた。
痛みで声さえ出やしない。
「……随分と久し振りじゃねーか、●。」
肩に置かれた晋助の手で壁に痛いほど押し付けられる。
全力で走った息切れとさっきの背中の痛みで声が出せない。
それをわかってる晋助は口元をあげて喉から笑った。
「おいおい、こんなんでそんなになってて大丈夫なのかよ、真選組隊士さんよぉ……。」
首元に刀を突きつけれた。
それとは別にさっき以上に胸が締め付けられる感じがして苦しかった。
晋助にとっては寝返った裏切り者でしかないことを今更になって思い出す。
自嘲が口から漏れた。
ぐっと押し付けられた刃が肉をきって一筋、首元から紅が流れる。
晋助が一瞬顔を歪めた。
痛みなんか構いやしない、
晋助の肩に顔をおいた。刃が喉元にさらに食い込む。
さすがの晋助も驚いて刀を引っ込める。
私は今日はオフで隊服も帯刀もしていない。
戦意はないと伝わればいい。と、ただ思った。
カチャン、と地面に落ちる刀の音。
「……っ!」
晋助が首筋の出血を綺麗になめとっていく、舌の感触がして、深くいった傷口にまで舌をはやされる。
形勢は逆転していて、両手を晋助にとられて、壁に押し付けられている。
手のひらをお互いに開きあって、指をからめあった。
「……んっ!」
てっきりそのまま舐められるのかと思っていた傷口を吸われる。
リアルに晋助の飲み下ろす音が聞こえてきて、じんわりと胸に熱が灯る。
それでも出血は止まらない、
晋助が顔をあげて視線が絡む。
不安の色が表情に出ていて、自分の胸まで締め付けられた。
私が、何故真選組になんか入ったのか、晋助は知らない。
昔の感覚が蘇ったように、二人して熱を孕んだ瞳をしていたと思う。
どちらからともなく、噛みつくようなキスをした。
会えなかった日々を埋めるように、
今でも愛してるということが伝わるように、
裏切ったのは、晋助が嫌いになったわけじゃない。
それも伝わって欲しいと、私は願って。
唇を放しては重ねて放しては重ねて。
押し付けられていた指を解放される、そのまま晋助の手が下ってきて腰を支えてくれた。
私は答えるように、首に手を回す。
そのキスが最後だった。
放置していた首筋の傷から流れ出す血のせいで意識が霞んできた。
晋助もそれがわかったようで、それ以上唇を重ねる事はなく、
何か布を破る音がして、晋助に寄りかかりながら、首を動かそうとして
もう一度、今度は優しく、壁によりかからせる。
しゅるっと首に何か巻かれる。
そのままぎゅっと縛り付けられた。痛みにうめく。
晋助の着物の裾がちぎれた後を見つけて、少し笑った。
「……ありがと。」
喉から出た声は掠れていたけれど、
晋助はさっさと何処かへ行く準備をしている。
立っていられなくなって壁を伝って座り込んだ。
「●。」
名前を呼ばれて顔を上げる。
視界さえもかすれてきて、もう晋助の顔さえ見えない。
「……一緒に来る気はねぇのか。」
最後の足掻きだと思った。
返事の変わりに、首を横に降る。
そうか、と晋助の声が上から聞こえたあと、暗闇に意識が落ちた。
これ以上汚れていく貴方を見たくない。
これ以上貴方が汚れてほしくない。
だから、追い詰めた時は一緒に逝こう? 晋助。
――――――――――――ラストフレンズのテーマを聞きながら衝動的に書きました(笑)
重いよ、この話し爆笑
相変わらず原稿の方は進んでおりません(笑)
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